2026-07-16 / blog / 約6,215字(読了 約13分)

「学習に使わせない」を選ぶと、昨日までの会話が見えなくなる——Geminiのスイッチを実地で往復し、ChatGPT・Claude・Grokと見比べた

チャットAIとの会話は、初期設定のままだと学習や改善に使われることがあります。では、止めるスイッチはどこにあって、切ると何が起きるのか。次期モデルの公開が近いと噂される前日に、Geminiの設定画面を実際に歩き、オフにして、元に戻すまでを記録しました。切ってもデータは消えません。それなのに、昨日までの会話がアプリから見えなくなりました。ChatGPT・Claude・Grokの公式説明と並べると、Geminiだけの設計と、Grokだけが持つもうひとつ深い層が見えてきます。

仕事の下書きや相談ごとをチャットAIに投げるとき、ふと手が止まることがあります。この会話は、AIの学習に使われるのだろうか。使われるとして、止める設定はどこにあるのだろうか。

答えはサービスごとにずいぶん違います。今回はそれを、いつもの研究データベースの集計ではなく、画面の上で確かめることにしました。歩いたのはGeminiです。Googleの次期モデルGemini 3.5 Proが7月17日に公開されるとの報道が続いています。本稿を書いている7月16日の時点で公式発表もモデルカードも確認できていないので、まだ噂の段階の話ではあるのですが、画面が大きく変わるかもしれない節目の前日は、現行の姿を記録しておくのにちょうどよい日でもあります。

やったことは単純です。会話をAIの学習や改善に使わせないための設定(いわゆるオプトアウト(*1))を探し、実際にオフにし、何が起きるかを見て、元に戻す。使ったのは筆者の個人アカウントで、PCのブラウザ版とiPhoneのアプリ版の両方です。先に白状しておくと、スイッチ探しそのものは拍子抜けするほどあっさり終わりました。話が動くのはそのあとです。会話のデータは消えていないのに、アプリからは昨日までの会話がぜんぶ見えなくなりました。

論点1: スイッチは2クリック先にある。ただしGeminiの外に

まず道のりから。PCでは、gemini.google.com の画面左下にある歯車のアイコンを押し、開いたメニューの「アクティビティ」を押します。これで到着、2クリックです。スマホアプリでも、プロフィールアイコンを押してアカウント画面の「Gemini アプリ アクティビティ」を押す2タップで着きます。

近いのです。ただ、着いた先はGeminiの設定画面ではありません。PCでもスマホでも、myactivity.google.com という別のサイトに連れて行かれます。Google検索やYouTubeの利用履歴をアカウント単位でまとめて管理する「マイ アクティビティ」(*2)です。Geminiの会話履歴はこの仕組みの一部として扱われていて、会話を学習に使わせるかどうかの管理も、アプリの中ではなく、Googleアカウント全体の履歴管理の側に置かれています。

歩いていて気になったのは、呼び名の揺れです。PCのメニューでは「アクティビティ」、スマホでは「Gemini アプリ アクティビティ」と表示され、たどり着いた先では「アクティビティの保存」という設定名になります。おまけに公式ヘルプの手順には「設定とヘルプ」というボタン名が出てくるのに、実際の画面にあるのは歯車のアイコンだけでした。同じひとつの設定を探すあいだに、名前が三つ四つと入れ替わっていきます。

初期値のほうは、はっきり書かれています。「18 歳以上のユーザーの場合、[アクティビティの保存]はデフォルトでオンになっています」と公式ヘルプに明記があり、画面には、いつからオンになっているかの日付まで表示されていました(筆者の画面では「2025年12月15日 からオンになっています」でした)。切り替えのボタンを開くと、選択肢は「オフにする 1ステップ」と「オフにしてアクティビティを削除 2ステップ」のふたつです。メニューが所要ステップ数まで教えてくれるあたりは、妙に律儀だと感じました。

論点2: オフの正体は、削除ではなく履歴との別れだった

では、切ってみます。選んだのは「オフにする」のほうで、過去の削除はしていません。

押すと、確認のダイアログが出ます。今後のチャットはAIモデルのトレーニングに使用されないこと、それでも応答や保護の目的でチャットは72時間保存されること、が書かれています。「理解した」を押すと、続けてもう一枚出てきました。タイトルは「アクティビティは削除されていません」。以前に保存されたアクティビティは、自分で削除しない限り残り続ける、という説明で、実際にマイ アクティビティの画面を見ると、過去の会話はそのまま残っていました。

ところが、その足でGeminiのアプリに戻ると、様子が変わっています。サイドバーの「最近」にずらりと並んでいたチャットの一覧が丸ごと消え、代わりに「[Gemini アプリ アクティビティ]がオフになっています」という掲示と、オンに戻すためのリンクだけが残っていました。データは消えていない、とダイアログに言われた直後に、アプリの側では過去の会話への入り口がすべて閉じられたことになります。

オンに戻すと、一覧は元どおり全件戻ってきました。往復してみて腑に落ちたのは、このスイッチのオフが削除ではなく、アプリからの締め出しとして働くことです。データはマイ アクティビティに残り続けるのに、Geminiの画面からは過去のやり取りを開けなくなり、戻せば全部戻ってくる。

公式ヘルプによれば、オフのあいだに失うものは履歴の表示だけではありません。GmailやGoogleカレンダー、Googleドライブなどとの連携機能も使えなくなります(「オンに戻すと、過去に連携していたアプリへの Gemini によるアクセスが復元されます」と、こちらも明記されています)。整理すると、「アクティビティの保存」というひとつのスイッチには、少なくとも三つのことが束ねられています。

flowchart TB
    SW["アクティビティの保存(ひとつのスイッチ)"] --- A["会話をAIの学習・改善に使うか"]
    SW --- B["過去の会話をアプリで開けるか"]
    SW --- C["Gmail・カレンダー等の連携を使えるか"]

仕事で使う場面を思い浮かべると、この束ね方はなかなか悩ましいものです。業務の相談や下書きを学習に出したくない、と考えてオフにした瞬間、過去のやり取りを参照しながら続きを進めるという使い方がまるごとできなくなります。会話単位の逃げ道としては、履歴に残さず学習にも使わせない一時チャット(*3)が用意されているので、ふだんはオンのまま、見られたくない相談だけ一時チャットで、という使い分けが、いまのGeminiで両立にいちばん近い道になりそうです。

論点3: オフにしても、72時間・18か月・3年は残る

一方で、「オフにすれば何も残らない」わけでもありません。画面とヘルプの記述を突き合わせると、保持期間は少なくとも三層ありました。

まず72時間。オフにしても、また一時チャットでも、会話は最長72時間アカウントに保存されます。公式ヘルプの説明では、直近24時間の会話を応答の文脈として使うため、そしてシステム障害への備えや、利用者と一般の人々の保護のためです。この保存分は本人の「Gemini アプリ アクティビティ」には表示されません。オフのあいだでも、保護を目的とした利用には人間のレビュアーによる確認が含まれる、という記述もプライバシー ハブにあります。

次に18か月。オンのまま使う場合の自動削除の初期値で、設定画面には「18 か月以上経過したアクティビティを削除します」とあります(期間は変更できます)。

そして3年。いちばん見落としやすいのがこれで、オフにしたときのダイアログの注意書きに出てきます。「アクティビティを削除しても、サービス プロバイダによってレビューされた過去のチャットはすでに Google アカウントから切り離されているため、削除されません。過去のチャットは最大 3 年間保持されます」。品質改善などのために人間のレビューを経た会話は、本人がアクティビティを全部消しても手の届かない場所に、最長3年残るということです。

逆向きの事実もあります。音声とGemini Liveの動画・画面共有をサービス改善に使う設定は、テキストの会話とは別のチェックボックスになっていて、こちらは「デフォルトでオフ」だと公式ヘルプに明記されています(オンにするには「アクティビティの保存」がオンであることが前提です)。テキストは初期値オン、音声と映像は初期値オフという非対称がある、ということです。もうひとつ、オフにしたときのダイアログには、「ウェブとアプリのアクティビティ」や「ロケーション履歴」といったアカウント側の別の設定によって、データが引き続き保存される場合があるという注意書きもありました。Geminiのスイッチをひとつ切っても、Googleアカウント全体の履歴の仕組みは、別のレールで走り続けます。

論点4: ChatGPTとClaudeは学習と履歴を分け、Grokは投稿まで学習する

ここまでの構造がGemini固有のものなのかどうか。ChatGPT・Claude・Grokの公式説明と並べてみます。

Gemini(個人向け) ChatGPT(個人向け) Claude(個人向け) Grok(X連携)
学習利用の初期状態 オン(18歳以上・公式ヘルプに明記) オンから始まる(止める操作が用意されている) 2025年8月末の規約変更以降、利用者が自分で選ぶ方式 オン(Grokとのやり取りに加え、Xの公開投稿も対象)
止める操作 「アクティビティの保存」をオフ(マイ アクティビティ側) 設定 → データコントロール →「すべての人のためにモデルを改善する」をオフ 設定のプライバシー項目で学習許可のトグルをオフ Web版Xの「データ共有とカスタマイズ」→「Grok」をオフ
止めたとき、過去の会話は アプリから全件見えなくなる(データは残る) 「会話は引き続きチャット履歴に表示されます」(公式FAQ) 履歴が見えなくなるという案内はない 履歴や機能への影響の案内は見当たらない
学習設定と結びつく保持期間 オフでも72時間・レビュー済みは最大3年 一時チャットは30日で削除 許可すると最長5年・許可しないと30日 保持期間と結びつけた説明は確認できず

ChatGPTの公式FAQは、この点をはっきり書いています。「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにした場合、「会話は引き続きチャット履歴に表示されますが、ChatGPT のトレーニングには使用されません」。学習に使わせない選択と、履歴を使い続けることが両立する設計です。

Claudeは2025年8月末の規約変更で、個人向けプラン(Free・Pro・Max)の会話を学習に使うかどうかを、利用者自身が選ぶ方式になりました。既存ユーザーには選択の期限(2025年10月8日)が切られ、それを過ぎると、どちらかを選ばない限り使い続けられない仕組みです。学習を許可するとデータの保持期間が最長5年に延び、許可しなければ従来どおり30日です。選んだ結果が保持期間に効いてくるところは独特ですが、学習を断ると履歴が画面から消える、という類いの案内は見当たりません。

Grok(xAI)は、比較の軸がひとつ増えます。チャットの会話だけでなく、Xの公開投稿そのものが学習素材になるからです。Xの公式ヘルプには、ユーザーの公開Xデータと、X上のGrokとのやり取り・入力・結果を、Grokやその他の生成AIモデルの学習・微調整のためにxAIと共有することがある、と書かれています。この共有は初期状態で有効です。止めるにはWeb版Xの「設定とプライバシー」から「プライバシーと安全」、「データ共有とカスタマイズ」とたどった先の「Grok」でチェックを外します(導入時点ではWeb版のみで変更できると案内されていました)。対象が公開データなので、アカウントを非公開にするのがもうひとつの手だと紹介されることもあります。さらにさかのぼると、Xの利用規約そのものに、投稿コンテンツの利用許諾には「生成型か他のタイプかを問わず、当社の機械学習や人工知能モデルへの使用やトレーニング」が含まれる、と書かれています(本稿で確認した現行規約の発効日は2026年4月10日。この文言は2024年11月の改定で加わったと報じられていたものです)。チャットAIに何を話すかは自分で選べますが、SNSへの投稿は日々の暮らしの一部です。その日常の行為が学習素材の提供と結びついているという意味で、Grokのスイッチは他の三つより一段深いところにあります。

四つのサービスとも、「学習に使わせない」を選べること自体は同じです。違うのは、その選択が何とセットになっているか。ChatGPTとClaudeでは学習の設定と履歴が独立しています。Grokでは対象が会話の外の公開投稿まで広がります。そしてGeminiでは、学習を止める操作が、履歴への入り口と連携機能をまとめて閉じる操作を兼ねています。

なぜGeminiだけこうなっているのかを、Googleは説明していません。ただ、論点1で見たとおり、Geminiの会話履歴は検索やYouTubeと同じ「アクティビティ」という履歴基盤の上に載っています。保存する(そして改善に役立てる)か、保存しないか、という二択で設計されてきた仕組みに、あとからチャットの履歴機能が乗った形だとすれば、「保存=学習に使う」が一体になっていることの説明はつきます。もっとも、これは構造からの推測で、断定はしません。

観測点

予測はしません。代わりに、あとから同じ物差しで測り直せる観測点をふたつ置きます。

その1。次期モデルの公開で、この画面は変わるか(記録型)。Gemini 3.5 Proは7月17日公開と報じられています。公開が実現したら、その後に同じ道のりを歩き直し、設定の場所・名前・初期値・文言と、プライバシー ハブの最終更新日(起点は2026年6月29日版)に変化があったかを記録します。本稿の実地記録(2026年7月16日・PC2クリック/スマホ2タップ・初期値オン・オフで履歴が見えなくなる挙動)がその起点です。次に見るのは2026年8月上旬です。

その2。束ねられたスイッチは、分離されるか。「学習に使わせない」と「履歴を保持する」をGeminiで別々に選べるようになるかどうか。2026年内にこのふたつが独立した設定になれば「分離」、変わらなければ「束ねの継続」として記録します。次に見るのは2026年12月ごろです。

起点は2026年7月16日です。

注釈

*1 オプトアウト(opt-out) — 初期設定で有効になっている扱いを、利用者が自分の意思で外すこと。この記事では、チャットAIとの会話をAIの学習・改善に使わせない選択を指す。反対に、利用者が明示的に同意して初めて有効になる方式はオプトインと呼ばれる。

*2 マイ アクティビティ(Google マイ アクティビティ) — Google検索・YouTube・マップなどの利用履歴を、Googleアカウント単位でまとめて確認・削除できる管理画面(myactivity.google.com)。Geminiの会話履歴もこの仕組みで管理されている。

*3 一時チャット — 履歴に残さず、AIの学習にも使わせない前提で行う1回かぎりの会話機能。GeminiとChatGPTの双方にあり、保存期間はGeminiが最長72時間、ChatGPTが30日と説明されている。Geminiの一時チャットも、利用者保護を目的とした利用(人間のレビューを含む)の対象にはなる。

tags: プライバシー / 実地観測 / 定点観測

この記事は運営者がテーマを決め、AIが執筆し、運営者が内容を確認・修正のうえ公開しています。

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